僕のマリさん:サイン会
\僕のマリさんサイン会開催!/
TwitterのTLに、僕のマリさんのサイン会のお知らせが流れて来た。
え、行きたい!と思ったのも束の間、最新刊の「書きたい生活」はサイン本を手に入れ読み終わっているし、「常識のない喫茶店」はサイン本ではないが別の書店で購入済みだ。
サイン会とは、本を購入してその場で書いてもらうものではなかろうか。
書店に問い合わせればいいものを「そんな当たり前のことも知らないのか」と思われたくなく、うじうじしていた。
自意識過剰なのは分かっている。
旦那氏の「いつ問い合わせするんだろう」という無言の圧力には気付かないフリをして、結局当日を迎えてしまった。
当日の朝Twitterを開くと「購入済みの本のご持参もOKです」というツイートが新たに流れてきた。
それからの行動は早い。
シャワーを浴び、メイクをし、着替えを済ませ、購入済みの本をリュックに入れ、家を出る。
新宿まで出、小田急線に乗って下北沢へ。
電車に揺られながら、どんな方なのか想像してみる。
文章の雰囲気と「常識のない喫茶店」の装丁から、ショートボブでキリッとしたイメージが浮かんだ。
僕のマリさんは今1番好きな作家さんだ。
本の感想は割愛するが(文才がないのでここに書き残そうとしたら1ヶ月以上掛かる事が容易に想像できるので)、スマホやNetflix漬けで読書から離れていた私を一瞬で引き戻してくれた。
ドキドキしながら書店に入り、それらしきスペースを探す。
空間を区切るように置かれたハイキャビネットの向こう、小さなテーブルと椅子が配置されたそこに、柔らかな雰囲気の女性と、眼鏡の編集者さんが掛けていた。
私がそわそわしていると編集者さんが促してくれ、持参した本を受け取ってくれた。掛けたままだった書店のブックカバーを見、僕のマリさんに「西荻窪の今野書店さんです」と伝えてくれた事で会話が広がる。
好きな本屋さんです、西荻窪にお住まいですか?
自宅が○○で近いのでよく行きます。
良い喫茶店が多いですよね。
本当に!西荻窪に来られるんですか?
飲みに行くことがあります。
いつかバッタリ会うかもしれませんね。
話せた嬉しさで、頭からつま先まで毛穴が開き、さっきまで寒くて震えていたのに、じんわりと暑さを感じてコートのボタンを外した。
今日が雨でよかった。晴れていたら高揚した気持ちが暴走して、何か大きな失敗をしでかしたかもしれない。
その後も僕のマリさんの元に、読者さんが続々と訪れていた。
どんな会話をしているのか気になりつつ、別の書店のトークイベントに行くと伝え忘れた事に気付く。
憧れの人の前だとどうも挙動不審になってしまう。
私のような人が他にもいて欲しい。
そして私の印象が少しでも薄まって欲しいと願った。