Eureka

他愛もない毎日のこと、本や書店めぐりの記録

UNITÉトークイベント:日記からはじまる

ユニテのオンラインショップで本を買おうとしていたら、ふと僕のマリさんと小沼理さんのイベントが目に止まった。予定が空いている事を確認してすぐカートに入れる。
僕のマリさんってどんな方でどんなお話をするんだろう、そんなミーハーな気持ちで申し込んでしまい、あとからテーマが「日記からはじまる」だったと知る。

今こうしてぽちぽちとブログを書いているのも、僕のマリさんの文章に惹かれたからで、これはこれで自分に必要なタイミングだったのだと思う。

 

早速、参加者に向け日記を書いている人がいるか質問される。半数以上の手が挙がり驚いた。ミーハーな気持ちで参加したことを申し訳なく思った瞬間だった。もちろん私は手を挙げない。

 

そもそも文章を書くことが苦手である。あることがきっかけで、日記、手紙、メール、LINE、同僚に渡す付箋のメモさえも…書くこと全てが苦痛になってしまった。(この記事を書くのにも莫大な時間が掛かっている。)それなのに定期的に書き残したいという欲求が湧くから不思議だ。今日をきっかけに、少しでも書くことに前向きになれたらいい。

 

興味深かったのは、僕のマリさんと小沼さんの日記の書き方が全く違うということ。日記に決まりがあるわけじゃなし、他人がどんなふうに書いているかなんて考えたこともなかったから新鮮な驚きだった。

 

日記を始めたきっかけを聞かれて、僕のマリさんは「読み返した時おもしろいから。この日誰々と遊んだとか自分の過去を思い出すのが好き」とおっしゃっていた。僕のマリさんのように読み返したくなるような日記を書けたら良いのにと思う一方で、私は小沼さんの書き方に興味を引かれていた。
小沼さんは「手を止めずに書く」についてお話しされた際、「思いついたことを全てテキストファイルに残しておきたい。思考をすべて書くには、スマホよりもパソコンで書くほうが早い。”てにをは”や、言葉の拙さも気にしない。そうすることで思考が整理される」と言った。日記ではないけれど、書くことで堂々巡りの思考が整理される感覚は私にも経験があった。

 

数年前の辛かった時期のことがフラッシュバックする。あまりにも辛すぎて、意を決してカウンセリングを受けることにした。初め何を話せばいいか分からず、高いお金を払っているのにあっさりと診察が終わる、ということを繰り返していた。なんだか時間もお金も無駄にしている気がして、カウンセリングの記録をつけ次に話す材料を用意していくことにしたのだが、気がつくとノートに感情をぶつけるという体裁になってしまった。


その日もいつものようにカウンセリング後スタバに寄り、ノートを開いた。「カウンセラーとこんな事を話した。どうしてこういう風に考えてしまうんだろう」そんな事をつらつらと書き留める。すると、すっかり忘れていた子供の頃の記憶が蘇った。その時感じた悲しみが今の私の思考のクセに繋がっていることに気が付き、まさに雷に打たれたような衝撃で、涙がとめどなく溢れてくる。左手のハンカチで目頭を押さえながら右手のペンは止まらない。今思えば怖い情景だが、あれは書かなかったら得られない経験だった。

 

小沼さんも「ばーっと書いたものを1本の流れにする。ユリイカ(私のブログのタイトル!)のような感覚は、2段階目、文章を整理するときに起きている」とおっしゃっていたので、私が日記を始めるときは、小沼さん様式になりそうだ。

 

こうしてみるとおふたりの日記の書き方の違いは、何を書き留めておきたいかの差なんだと思う。僕のマリさんは「日記なんだからまず朝何時に起きた、誰と何をしたか書かないとと思ってしまう。」とおっしゃっていたので日々の出来事の記録。
小沼さんは感情の動きの記録という色合いが濃いのかもしれない。日記に1時間弱かかる日もあるというので再び共感してしまう。

 

次第に私は小沼さんにどうしても聞きたくなった。「書き続けて辛くなることはないですか?書く事が嫌になりませんか?そういう時はどう乗り越えていますか?」

あとで時間があったら聞こう思っていたが、最後に小沼さんが発した言葉がその答えとなった。
「つらい時期が続くと書き残したくなるけど、それを書いて自分をえぐっちゃうことってあると思う。書くことがしんどくなってこれ以上書くことができないとなってしまったら元も子もない。書きたくなる気持ちはわかるけど、書かないという選択肢も大事かなと思う。」

 

辛い出来事こそ私は書き留めたくなる方だ。そして読み返しては闇に落ちてしまう。だから日記をやめる、というのがパターンだった。

書きたいけどあえて書かないという選択。日記に対する自由度が拡がる感覚がした。私にも始められるだろうか。


2023/4/1 UNITÉ@三鷹
「『書きたい生活』刊行記念 日記からはじまる」(ゲスト:僕のマリ、小沼理)

 

トークイベントは次の3つの構成から成り、日記をつける上で大切にしている事、気をつけている事をおふたりが3つずつ挙げられた。

①書く
 僕のマリ:簡潔に的確に書く・文章の灰汁を抜く・リズムの良さを重視する
 小沼理:朝から夜に向かって書く・まずは手を止めずに描く・主観で正確に書く

②編む
 僕のマリ:台詞の忠実さ(実際の喋り方に)・社会への問いを編み込む・

 一冊としてのバランスを見る(濃すぎないように)
 小沼理:矛盾していていい・答えよりも過程にこだわる・

 誰かの権利を侵害していないか

③売る
 僕のマリ:好きなお店に置いてもらう・長く売ることを考える・

 どんどん書き続ける!
 小沼理:お釣りを出さない価格に!・読者との接点をつくる・自分を見せ物にしない

 

購入品記録

  • 1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい|小沼理
  • パートタイム・コメット|佐々木里菜